メディアに取り上げられることの多い、ごみ屋敷問題。
世界のごみ屋敷や、汚部屋で暮らしている芸能人の話題など、ごみ屋敷に関する話題は尽きることがありません。
日本国内でのごみ屋敷をめぐる状況は、現在どのようになっているのでしょうか?
政府による、「ごみ屋敷」に関する調査報告書をもとに、ご紹介したいと思います。
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ごみ屋敷問題についてのニュースがメディアで取り上げられるようになってから、少なくとも10年以上、あるいは、おそらく20年近い年月が経っています。
社会問題にもなったごみ屋敷の問題は、この長い年月の間にどのように変わってきたのでしょう?果たして、解決に向かっているのでしょうか?
残念ながら、ごみ屋敷は今も全国各地に存在し、地域で暮らす人にとって大きなストレス、脅威となっています。
ごみ屋敷の近くで暮らすこと、ごみ屋敷の存在は、悪臭、病気の蔓延、害虫の繁殖による健康への被害、そして火事や事故の危険性など、場合によっては命にかかわる危険な問題でもあるのです。
もちろん、自治体や行政も、ただ手をこまねいているわけではありません。
住民からの相談を受けつけていたり、地域のごみ屋敷に関する実態調査を行い、具体的な対策を実施している自治体もあります。今はその数はまだ少数ではありますが、ごみ屋敷への対策を実施する自治体は今後さらに増えていくことが予想されています。
平成 29 年度「ごみ屋敷」に関する調査報告書、という資料があります。
これは平成30年(2018年)に発表された、環境省による調査報告書です。
「ごみ屋敷」に関する調査とありますが、日本中にどれくらいのごみ屋敷が存在するのか?といった調査報告ではありません。全国の自治体(市区町村)が、各地域のごみ屋敷についてどのような認識を持っているのか、どのような対応をとっているのかといった状況についてのアンケート調査を実施した結果をまとめたものです。
最新のデータではないので、現状とは少し違っているかもしれませんが、自治体の取り組みが確認できる興味深い調査結果となっていますので、ご紹介したいと思います。
この資料は、ネット上で見ることができますので、興味のある方はぜひそちらもご覧ください。
環境省による、平成 29 年度「ごみ屋敷」に関する調査では、全国 1741の市区町村に対してアンケート調査が行われ、回答率は99.89%。2つの地域を除き、ほぼ全国すべての市区町村からの回答を得ています。
この調査で明らかになっているのは、次の2点です。
・地域のごみ屋敷問題を、自治体が把握しているか。
・地域のごみ屋敷問題に対して、自治体が対策を実施しているか。
市区町村が、それぞれの地域のごみ屋敷についての問題を認知しているか?というアンケートでは、認知している自治体が34.2%、認知していない自治体が65.8%という結果になっています。
・認知している:34.2%
・認知していない:65.8%
地域のごみ屋敷問題を自治体が把握していない市区町村が半数以上ありますが、これらの自治体がすべて、ごみ屋敷問題に気づいていないという意味ではなさそうです。
この64.8%の中には、
・ごみ屋敷自体が自治体に存在しない
・ごみ屋敷の存在を自治体が把握していない
・ごみ屋敷に関する相談や訴えが自治体に上がっていない
という3つの状況が考えられます。
さらにこの調査では、都道府県ごとに、ごみ屋敷事案を認知している自治体がどれくらい存在するかというデータが出ています。
認知状況が50%を超えているのは、広島県、埼玉県、愛媛県、東京都、茨城県、栃木県、愛知県、大阪府。20%未満は、青森県、高知県、奈良県、北海道となっています。
これらの、上位と下位にランクする都道府県ごとの認知状況の割合を、都道府県の人口、都道府県の人口を市区町村数で割った数値とあわせて比較してみましょう。
<都道府県別認知状況>
都道府県 | 認知状況 | 市区町村数 | 人口 | ※1 |
広島県 | 56.5% | 23 | 2,829,000 | 123,000 |
埼玉県 | 56.5% | 62 | 7,310,000 | 117,903 |
愛媛県 | 55.0% | 20 | 1,364,000 | 68,200 |
東京都 | 53.2% | 62 | 13,724,000 | 221,355 |
茨城県 | 52.3% | 44 | 2,892,000 | 65,727 |
栃木県 | 52.0% | 25 | 1,957,000 | 78,280 |
愛知県 | 51.9% | 54 | 7,525,000 | 139,352 |
大阪府 | 51.2% | 43 | 8,823,000 | 205,186 |
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北海道 | 18.4% | 179 | 5,320,000 | 29,721 |
奈良県 | 17.9% | 39 | 1,348,000 | 34,564 |
高知県 | 17.6% | 34 | 714,000 | 21,000 |
青森県 | 17.5% | 40 | 1,278,000 | 31,950 |
※1 都道府県の人口を市区町村数で割った数値
自治体ごとの人口が多い地域では、ごみ屋敷事案の認知割合が高く、少ない地域ほど、認知割合が低い傾向があることがわかります。
ひとつの自治体に属する人口が少ない地域ほど、ごみ屋敷の数自体が少ない可能性がある、ということがいえるかもしれません。
次に、各自治体が行っている、ごみ屋敷への対応を見ていきたいと思います。
これは、ごみ屋敷問題への対策として自治体が独自の条例を制定しているかどうかという調査です。
いわゆる「ごみ屋敷条例」と呼ばれるものを制定している自治体が4.7%、制定していない自治体が95.3%という結果になっています。
・条例を制定している:4.7%
・条例を制定していない:95.3%
残念ながら、ごみ屋敷問題を解決するための具体的な政策、法的な効力、有効な手段を持つ自治体の割合は、平成29年の段階で5%にも満たないという結果になっています。
現在は自治体ごとの取り組みとなっていますが、今後は、都道府県や国レベルの、もっと大きな枠組みでの取り組みや規制が行われるようになっていくかもしれません。
自治体が制定する、いわゆる「ごみ屋敷条例」では、具体的にどのようなことが定められているのでしょうか?
現在、全国の自治体で制定されている「ごみ屋敷条例」では、ごみ屋敷に対する措置として次のようなものが定められています。
・調査
・助言および指導
・支援
・公表
・勧告
・命令
・代執行
・その他
自治体が定める条例とはいえ、ごみ屋敷を勝手に掃除したり処分したりできるわけではありません。
まずは、ごみ屋敷について「調査」を行い、ごみ屋敷の問題を解決するための「助言や指導」「支援」を行います。そして、「勧告」や「命令」を経て、最後の手段として「代執行」が行われるという流れになっています。
「ごみ屋敷条例」は自治体ごとに内容が異なっており、全ての「ごみ屋敷条例」で「命令」や「代執行」といった、強制力の強いルールが定められているわけではありません。「助言や指導」「支援」といった内容がメインになっている「ごみ屋敷条例」も存在します。
各自治体が制定する「ごみ屋敷条例」の内容については、今後、より効果的な内容に見直しが行われることが期待されます。
自治体が定める「ごみ屋敷条例」には、命令に違反した場合の罰則規定が設けられているものがあります。その割合は、20.7%となっています。
罰則の具体的な内容は、「罰金、科料または過料」。
罰金とはお金が徴収される刑罰のひとつで、1万円以上の金額が徴収されます。科料は罰金よりも程度が軽く、罰金は1000円以上1万円未満になります。過料は科料よりもさらに程度が軽く、刑罰にはなりません。
「ごみ屋敷条例」で、罰則を定めている自治体はごくわずかです。そのうちさらに、実際に罰則を適用したことのある自治体は、全体の23.2%となっています。
環境省による、ごみ屋敷についての調査結果をご紹介しました。
全国の多くの自治体でさまざまな取り組みが行われていることを公表し、多くの人に知ってもらうことで、ごみ屋敷問題への対策がより一層広がっていくことが期待されます。
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